電力 全17問の解説
第1問・水力発電
ダムの種類と特徴の記述の誤り
アーチダムは、水圧をアーチの作用で両岸の岩盤に伝える形式で、谷の幅が狭く両岸の岩盤が堅固な地点に適する。両岸の幅が広い地点に向くという記述が誤りである。
公式正答(2) (2)が不適切
各選択肢の判断理由
(1) 重力ダムはコンクリートの自重で水圧に耐える:正しい
体積は大きいが構造が簡単で安定性が高く、国内で最も多い形式。正しい。
(2) アーチダムは両岸の幅が広い地点に作る:誤り
アーチダムは幅の狭いV字形の谷に向く。この記述が不適切。
(3) ロックフィルダムは岩石を積み上げて作る:正しい
遮水に粘土などを使い、近くで岩石が得られる地点に適する。正しい。
(4) アースダムは土を主材料とする:正しい
灌漑用の池などに多く、軟弱な地盤にも作れる。正しい。
(5) 取水ダムは水路式発電所の取水に使う:正しい
高さが低く、越流形のコンクリートダムが多い。正しい。
第2問・水力発電
地域の降水量から求める理論包蔵水力
1年間の降水がすべて流出し、平均海抜750 mの高さから海面まで落ちるとして位置エネルギーを求め、W·hに換算する。
公式正答(5) 15 TW·h
V=6500×106×1.1=7.15×109 m3
W=ρVgH=1000×7.15×109×9.8×750≃5.26×1016 J
3.6×10155.26×1016≃14.6 TW⋅h
1 TW·h=3.6×10¹⁵ J。最も近い選択肢は15 TW·h。
第3問・火力発電
復水器の役割
復水器はタービンの排気を冷却水で冷やして凝縮させ、水に戻して回収する。内部を高い真空度に保つと、タービン入口と出口の蒸気の圧力差が大きくなり、熱効率が上がる。
公式正答(1) 凝縮・真空度・圧力差・効率
各選択肢の判断理由
(1) 凝縮・真空度・圧力差・効率:正しい
4空欄とも正しい。
(2) 凝縮・真空度・圧力差・回転速度:誤り
(エ)が違う。真空度を高めて上がるのは効率で、回転速度は系統の周波数で決まる。
(3) 膨張・温度・温度差・回転速度:誤り
排気は冷却して凝縮させる。真空度を保つ装置である点とも合わない。
(4) 凝縮・温度・温度差・効率:誤り
(イ)(ウ)が違う。復水器が保つのは真空度で、大きくするのは圧力差。
(5) 膨張・真空度・温度差・回転速度:誤り
(ア)(ウ)(エ)が違う。
第4問・原子力発電
原子核の質量欠損と核分裂
原子核は陽子と中性子が結合したもので、その質量は陽子と中性子の質量の合計より小さい。この差が質量欠損で、結合エネルギーはE=mc²で表される。原子力発電はウランなどの核分裂の前後の結合エネルギーの差を利用する。
公式正答(2) 陽子・小さい・質量欠損・mc²・核分裂
各選択肢の判断理由
(1) 陽子・大きい・質量増加・mc²・核融合:誤り
原子核の質量は構成粒子の合計より小さく、原子力発電は核分裂を利用する。
(2) 陽子・小さい・質量欠損・mc²・核分裂:正しい
5空欄とも正しい。
(3) 電子・大きい・質量増加・mc・核融合:誤り
原子核に電子は含まれず、エネルギーの式もmcではない。
(4) 陽子・小さい・質量欠損・mc・核分裂:誤り
(エ)が違う。エネルギーはmc²で、mcは運動量の次元になる。
(5) 電子・小さい・質量欠損・mc・核分裂:誤り
(ア)と(エ)が違う。
第5問・電力貯蔵
二次電池と電力貯蔵用のNAS電池
充電して繰り返し使える電池は二次電池で、代表例がリチウムイオン電池。風力や太陽光の出力変動を蓄電池でならす(平滑化する)用途があり、大電力貯蔵にはナトリウム・硫黄(NAS)電池が使われる。NAS電池の単位質量あたりのエネルギー密度は鉛蓄電池の約3倍である。
公式正答(4) 二次電池・リチウムイオン電池・平滑化・ナトリウム・硫黄電池・単位質量あたりのエネルギー密度
各選択肢の判断理由
(1) 二次電池・リチウムイオン電池・平滑化・空気亜鉛電池・エネルギー密度:誤り
空気亜鉛電池は主に一次電池で、大電力貯蔵用ではない。
(2) 一次電池・リチウムイオン電池・短絡抑制・空気亜鉛電池・エネルギー密度:誤り
繰り返し使えるのは二次電池で、蓄電池の目的は出力の平滑化。
(3) 二次電池・酸化銀電池・短絡抑制・空気亜鉛電池・起電力:誤り
酸化銀電池は一次電池で、(ウ)〜(オ)も合わない。
(4) 二次電池・リチウムイオン電池・平滑化・ナトリウム・硫黄電池・エネルギー密度:正しい
5空欄とも正しい。
(5) 一次電池・酸化銀電池・平滑化・ナトリウム・硫黄電池・起電力:誤り
(ア)(イ)が一次電池で、(オ)も合わない。
第6問・変電
V結線方式の記述の誤り
V結線の利用率は、2台の変圧器容量2Pに対して取り出せる三相出力√3Pの比で√3/2(約0.866)。同じ変圧器3台のΔ結線と比べた出力比は√3/3(約0.577)になる。
公式正答(1) (1)が誤り
利用率=2P3P=23≃0.866,3P3P=33≃0.577 各選択肢の判断理由
(1) 利用率は√3/3:誤り
利用率は√3/2。√3/3はΔ結線と比べた出力比で、この記述が誤り。
(2) 電灯動力共用方式では共用変圧器の容量が大きい:正しい
共用変圧器には電灯と動力の電流が流れるので正しい。
(3) 単相変圧器2台で三相が得られる:正しい
V結線の特徴として正しい。
(4) Δ結線と比べた供給電力は√3/3倍:正しい
√3P÷3P=√3/3で正しい。
(5) Δ結線より電柱への設置が簡素:正しい
変圧器が2台で済むので正しい。
第7問・配電
6.6 kV配電線の保護の記述の誤り
地絡過電圧継電器(OVGR)は、接地形計器用変圧器で検出した零相電圧で動作し、変電所の母線に設置して母線全体の地絡を検出する。各配電線の引出口に置いて事故配電線を選択するのは地絡方向継電器である。
公式正答(2) (2)が誤り
各選択肢の判断理由
(1) 事故遮断後に自動再閉路する:正しい
一時的な事故で配電線を早く復旧させるための一般的な方式。正しい。
(2) 配電線引出口に地絡過電圧継電器を設置する:誤り
地絡過電圧継電器は母線に設置する。引出口には地絡方向継電器を置くので、この記述が誤り。
(3) 主変圧器二次側の過電流継電器の動作時限を長くする:正しい
配電線の継電器が先に動作するよう時限協調をとるので正しい。
(4) 各配電線に地絡方向継電器を設置する:正しい
零相電圧と零相電流から事故配電線を選択するので正しい。
(5) 各配電線に過電流継電器を設置する:正しい
短絡事故の保護として正しい。
第8問・送電
電線の太さの決定に関係しない事項
電線の太さは、許容電流、機械的強度、電圧降下、電力損失、コロナ放電の抑制などから決める。雷サージや開閉サージの波高は、がいしの個数や絶縁間隔などの絶縁設計で考える事項である。
公式正答(5) 雷・開閉サージの波高
各選択肢の判断理由
(1) 機械的強度:誤り
風圧や氷雪の荷重に耐えるために考慮する。
(2) コロナ放電の抑制:誤り
電線を太くすると表面の電位の傾きが下がり、コロナ放電を抑えられるので考慮する。
(3) 電圧降下:誤り
抵抗が小さい太い電線ほど電圧降下が小さいので考慮する。
(4) 線路損失:誤り
抵抗損は電線の断面積に関係するので考慮する。
(5) 雷・開閉サージの波高:正しい
絶縁設計で考える事項で、電線の太さとは特に関係しない。
第9問・送電
非接地方式の1線地絡の記述の誤り
非接地方式では中性点が接地されていないため、地絡電流は線路の対地静電容量を通って流れるだけで小さい。直接接地方式は中性点を直接接地するので地絡電流が大きくなる。
公式正答(1) (1)が誤り
各選択肢の判断理由
(1) 地絡電流は直接接地方式より大きい:誤り
非接地方式の地絡電流は小さい。この記述が誤り。
(2) 健全相の電位が上昇する:正しい
1線地絡で健全相の対地電圧は最大で線間電圧まで上がる。正しい。
(3) こう長が長いほど地絡電流は大きい:正しい
対地静電容量が増えるので正しい。
(4) 間欠アークで異常電圧を生じるおそれがある:正しい
非接地方式の欠点として正しい。
(5) 通信線の誘導障害は抵抗接地方式より小さい:正しい
地絡電流が小さいので正しい。
第10問・地中送電
電力ケーブルの損失の記述の誤り
金属シースの渦電流損は、シースを薄くするほか、導電率の低い(抵抗率の高い)材料を使うと小さくなる。導電率の高い金属シースでは渦電流が流れやすく、損失は大きくなる。
公式正答(5) (5)が誤り
各選択肢の判断理由
(1) 表皮効果は断面積が大きいほど影響が大きい:正しい
分割導体や素線絶縁導体で低減できる。正しい。
(2) 近接効果は相間距離を離すと低減できる:正しい
正しい。
(3) 誘電損は誘電率と誘電正接、電圧の2乗に比例する:正しい
W=ωCV²tanδで、Cは誘電率に比例する。正しい。
(4) クロスボンド接地でシース回路損を低減できる:正しい
3相のシース誘導電流が打ち消し合う。正しい。
(5) 導電率の高い金属シースで渦電流損を低減できる:誤り
導電率が高いと渦電流が大きくなる。この記述が誤り。
第11問・配電
ネットワーク方式の記述の誤り
スポットネットワーク方式では、ネットワーク変圧器の一次側に受電用の断路器、二次側にネットワークプロテクタ(プロテクタヒューズ、プロテクタ遮断器、ネットワーク継電器)を設ける。一次側と二次側の機器が逆になっている記述が誤りである。
公式正答(4) (4)が誤り
各選択肢の判断理由
(1) 複数回線で供給し、1回線が停電しても供給を継続できる:正しい
ネットワーク方式の特徴として正しい。
(2) 低圧ネットワークは低圧配電線を格子状に連系する:正しい
正しい。
(3) スポットネットワークは都心部の高層ビルなど大口需要家に適する:正しい
正しい。
(4) 変圧器の一次側にネットワークプロテクタ、二次側に断路器を置く:誤り
一次側が断路器、二次側がネットワークプロテクタで、この記述が誤り。
(5) 変圧器一次側の単一故障では停電しない:正しい
健全な回線から供給が続くので正しい。
第12問・変電
変圧器1バンク故障時の最大総負荷
1バンクが故障すると、残り2バンクを定格の120 %まで使える。故障前の負荷のうち7 %は他の変電所へ切り換えられるので、残る93 %を2バンクで受け持つ。
公式正答(3) 49.0 MW
0.93S≤2×20×1.2=48 MV⋅A⇒S≤51.6 MV⋅A
P=51.6×0.95≃49.0 MW
各選択肢の判断理由
(1) 24.5:誤り
残りを1バンクとした値。故障は1バンクで、健全な変圧器は2バンク残る。
(2) 42.4:誤り
48×0.93×0.95の値で、切り換え分を割らずに掛けている。故障前の負荷の93 %が48 MV·A以下になる条件で解く。
(3) 49.0:正しい
48÷0.93×0.95≒49.0 MW。
(4) 63.6:誤り
3バンクすべてを使い、切り換えの扱いも逆にした値。
(5) 73.5:誤り
3バンクすべてが健全とした値。
第13問・配電
単相3線式の負荷電圧と変圧器一次電流
負荷1(55 A)はL₁-N間、負荷2(60 A)はN-L₂間、負荷3(45 A)はL₁-L₂間にある。L₁には55+45=100 A、L₂には60+45=105 A が流れ、中性線には差の5 Aが負荷側へ流れる。
公式正答(2) V_a=99.3 V・V_b=98.4 V・I₁=3.26 A
Va=105−0.06×100+0.06×5=99.3 V
Vb=105−0.06×105−0.06×5=98.4 V
中性線の電流は変圧器から負荷側へ向かうので、V_aでは電圧降下を打ち消す向き、V_bでは加わる向きになる。
I1=6600105×100+105×105≃3.26 A
各選択肢の判断理由
(1) 98.6・96.2・3.12:誤り
二つの電圧も一次電流も計算と合わない。
(2) 99.3・98.4・3.26:正しい
電圧2つと一次電流が計算どおり。
(3) 98.6・96.2・3.26:誤り
一次電流は合うが、電圧が中性線の電流の扱いと合わない。
(4) 99.3・99.0・3.26:誤り
V_bで中性線の電圧降下の向きを逆にしている(105−6.3+0.3=99.0)。
(5) 99.3・98.4・3.12:誤り
電圧は合うが、一次電流は二次側の巻線電流から3.26 Aになる。
第14問・電気材料
電気絶縁材料の記述の誤り
変圧器の絶縁油は、絶縁のほか、対流で熱を運んで冷却する役割がある。対流しやすいように粘度は低い方がよい。
公式正答(2) (2)が誤り
各選択肢の判断理由
(1) SF₆ガスは絶縁耐力と消弧能力が高く、温暖化への影響が大きい:正しい
正しい。
(2) 絶縁油は冷却のため粘度が高い方がよい:誤り
冷却には粘度が低い方がよい。この記述が誤り。
(3) 架橋ポリエチレンは絶縁特性と耐熱変形性に優れる:正しい
正しい。
(4) OFケーブルの油浸紙は油圧を加えて絶縁破壊強度を高める:正しい
正しい。
(5) 磁器がいしが主流で、ポリマがいしの利用が進んでいる:正しい
正しい。
第15問・水力発電
揚水発電所の発電出力・揚水入力と総合効率
発電時は総落差から損失水頭を引いた有効落差、揚水時は総落差に損失水頭を足した全揚程を使う。効率は発電時に掛け、揚水時は割る。
公式正答(5・3) (a)192,500 kW・213,750 kW (b)10時間・72.0 %
Pg=9.8×50×(450×0.97)×0.90≃192500 kW
Pp=0.859.8×40×(450×1.03)≃213750 kW
(b) 8時間の発電で使う水量を40 m³/sで汲み上げる。
Tp=4050×8=10 時間,η=213750×10192500×8≃0.720
(a) 各選択肢の判断理由
(1) 192,500・201,300:誤り
揚水入力で損失水頭を引いている。揚水では全揚程450×1.03 mを使う。
(2) 198,500・207,500:誤り
発電・揚水とも損失水頭を考えていない。
(3) 204,400・201,300:誤り
発電と揚水で損失水頭の足し引きが逆。
(4) 198,500・213,750:誤り
揚水入力は合うが、発電出力で損失水頭を引いていない。
(5) 192,500・213,750:正しい
有効落差436.5 m、全揚程463.5 mで計算した値。
(b) 各選択肢の判断理由
(1) 8時間・72.0 %:誤り
効率は合うが、揚水量40 m³/sでは同じ水量に10時間かかる。
(2) 8時間・76.5 %:誤り
揚水時間が違い、効率も損失水頭を入れていない0.90×0.85の値。
(3) 10時間・72.0 %:正しい
揚水10時間、変換効率約72.0 %。
(4) 10時間・74.2 %:誤り
損失水頭を片方だけ入れた値(0.765×0.97)。
(5) 10時間・76.5 %:誤り
機器の効率の積だけで、損失水頭による落差の差を入れていない。
第16問・送電
電線の実長の式と水平張力
電線の実長は、径間Sにたるみの2乗に比例する分を足したL=S+8D²/(3S)で表される。(b)では実長と径間の差からたるみを求め、水平張力の式T=WS²/(8D)に代入する。
公式正答(1・4) (a)S+8D²/(3S) (b)7.22 kN
L−S=3S8D2=0.01⇒D=83×50×0.01≃0.433 m T=8DWS2=8×0.43310×502≃7.22×103 N=7.22 kN
(a) 各選択肢の判断理由
(1) S+8D²/(3S):正しい
電線の実長の式。
(2) S+8D/(3S):誤り
たるみの2乗になっておらず、単位も合わない。
(3) S+3D²/(8S):誤り
係数の8と3が逆。
(4) S+3D/(8S):誤り
係数もたるみの次数も違う。
(5) S+D²/(3S):誤り
係数8が抜けている。
(b) 各選択肢の判断理由
(1) 2.34:誤り
たるみを3D/(8S)の式から1.33 mとした場合の値。
(2) 2.55:誤り
たるみをD²/(3S)の式から1.22 mとした場合の値。
(3) 2.77:誤り
この張力ならたるみは約1.13 mとなり、実長と径間の差が約0.068 mになって条件の0.01 mと合わない。
(4) 7.22:正しい
D≒0.433 mからT≒7.22 kN。
(5) 16.7:誤り
たるみを0.1875 m(平方根を取る前の値)とした場合の値。
第17問・配電
単相3線式のバランサの電流と損失の減少
負荷側にバランサをつなぐと、上下の電圧が等しくなるよう電流が流れ、両外側線の電流はそろい中性線の電流は0になる。外側線の電流は二つの負荷電流の平均になる。
公式正答(3・5) (a)12.5 A (b)172 W
I=275+50=62.5 A,IB=75−62.5=12.5 A
P1=0.15×(752+502)+0.20×(75−50)2≃1343.8 W
P2=0.15×2×62.52≃1171.9 W,P1−P2≃172 W
(a) 各選択肢の判断理由
(1) 8.3:誤り
負荷電流の差25 Aの1/3。バランサは差の1/2を受け持つ。
(2) 10.0:誤り
負荷電流の差25 Aの0.4倍で、半分の12.5 Aと合わない。
(3) 12.5:正しい
75 Aと平均62.5 Aの差。
(4) 15.0:誤り
負荷電流の差25 Aの0.6倍で、半分の12.5 Aより大きい。
(5) 25.0:誤り
負荷電流の差そのもので、バランサには半分の12.5 Aが流れる。
(b) 各選択肢の判断理由
(1) 57:誤り
中性線の損失125 Wがなくなる分だけでも、この値を上回る。
(2) 69:誤り
減少量は外側線で約47 W、中性線で125 Wあり、合計は約172 W。
(3) 86:誤り
減少量172 Wの半分。
(4) 103:誤り
中性線だけで125 W減るので、103 Wでは足りない。
(5) 172:正しい
1,343.8−1,171.9≒172 W。